痛い程の光が俺の眼を刺す
眩しすぎて目も開けられない
それが遮られたかと思うと、彼が俺に向かって笑いながら言った ねェラッドラック、君はただ眠っているだけで良いんだ。
次に目が覚めた時、オレ達は、ずっと、……
彼の顔が、俺を見下ろす
きらりと光る注射の針
縛り付けられて身動きの取れない俺の体
悲鳴を上げそうになって、塞がれる口
「やめろ、っ、…いやだ、フリッカ……やめろ、頼む…ッ…」
変な薬
変な装置
聴力も、声も、力も、体も、
削り取って、搾り取って、オレが全部貰ってあげる、ねェ
オレはずっと、きみを見てるよ、
「オイフリッカロッタ!どうした、大丈夫か?!オイ!!」
吹き出る冷や汗に、俺は荒く息を吐く
冷たい酸素が一気に体内になだれ込む苦しさに目を白黒させながら、俺は必死に頭を振った
途端に俺の腕が誰かに掴まれて、動転した俺はそれを思い切り振りはらう、
「やっ……離せ、嫌だ!!俺に触んなァっ!!!」
ガッっという鈍い音で漸く我に返った俺は、目を見開いて音の方向へ首を回した
そこでエマは頭を抱えて壁際に蹲っているところで、俺が曇ったうめき声を上げると、痛って…、と短く不機嫌そうな声を出す
俺はそこで漸く今まで見ていたものが悪い夢だということに気がついて、
ベッドから慌てて起き上がろうとしてまたうっと呻いた
体が、思うように動かねェ。震えてやがる。
「…っ…フリッ、カ…?………」
エマの声で俺は我に帰る、壁際でうずくまっていた少女は不思議なものでも見るように俺を見つめているところで、
俺はあっけにとられたままその顔をぼんやり見つめ返した
その顔に赤く、確実に俺が叩いた手の痕が残っていても、俺には何が何だか分からずにいて、
「………は、?…あ、…ぁ……エマ、……俺、寝ぼけて……悪ィ、……平気か?」
「お前……」
俺の狼狽っぷりに明らかに動揺の色を浮かべるエマの顔、赤くなった頬、
見ていられなくなった俺は、どくどくと暴れ続ける心臓を抑えつけながら何とかフラフラと立ち上がった
そっと壁際の彼女の隣にしゃがみこむと、不安だらけのその瞳に俺の情けない笑顔がうつる
火照った手をそっとエマに伸ばすと彼女はその手に自分の小さな手をそっと添えるから、
俺の指はその頬に届く前にエマの指に絡めとられて、それが小さな彼女の緩やかな拒絶だと気づくまで、俺は呆然と空を見つめたままだった
「ごめん、…エマごめん」
「……いいよ、寝ぼけてたんだろ」
いつもの事じゃねェか、皮肉を吐いた彼女の顔が笑う
絡められたままの指がそっと離れようとして、俺は慌てて力を込めた
すこしだけ驚いたような顔を見せてから、エマが俺の手を握り返す
小さな手に、ぎゅっと握られている感覚は何故かとても心地よくて、
「…落ちついた?」
「………あぁ…」
エマはそれだけ言うと、そう、と小さく笑みを漏らす
俺は情けなく微笑んで、何も聞かない彼女の額にこつんと自分の額を寄せた
彼女に少しでも縋っていたくて、触れていたくて、
こうしていれば、あの悪夢から逃げられるような気がして
数センチ先の距離で、小さく微笑む少女にそっと優しくキスをする
縋りつくように、ずっと触れていられるように、
あの男から、逃げたままでいられるように
絡ませ合ったままの二人の指先は離れない
それでもいつかはこの細い指も俺から離れていっちまうことは俺にも判っていて、
だから俺はいつか痛みで彼女が悲鳴を上げるまで、この指を強く握っていようと心の中でそっとおもう
俺にはそれが、怖くて怖くてたまらなかった
救ってくれるハズのその指先は
どっぷりエマ依存 フリッカの過去をそろそろかきたい