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2025/01/15(Wed)
ADMIN
いででっ!!、なんて喚くハチルにウチは思わずため息をついた
大の男が切り傷くらいでぎゃあぎゃあわめきくさってなんやねん、ここの男はどいつもこいつもクインに調教されてヘタレ丸出しやからイラつくんや、
脱脂綿が傷口に触れるたびびくりと身を引くハチルの腕を抑えつけながらぼんやりとそんな事を思う 「ねェ心なしかそれぐりぐり押し付けられてる気がする…」
「気のせいや、黙って消毒されとき」

涙目に自分の腕を見つめるハチルの傷は、ウチが手当てしてやっても後から後から増えて行く
もちろんそれはクインが彼に噛みついた痕だったり、クインに殴られた痣だったり、クインに刺された切り傷だったりいろいろで、
いくらモンスターの傷は治るのが早いといってもこの頻度で繰り返されては治ったところでまた新しいのが増えていくだけだ
つまりウチの治療はほぼ無駄ということになる

「なんでアンタみたいなヘタレが好きなんやねんなァクインは」

消毒してやった傷口をピンセットで突っついてみながらウチはポロリと本音を漏らす
え、と呟きかけたハチルはあまりの痛みに疑問符の代わりにギャッと悲鳴を上げた

「アンタもやで。なんでクインみたいなDV女のとこにいつまでもおんねん、アタマおかしいんとちゃう」
「だからってつつくこと無いだろ!!なにすんだよお前鬼か!」

そんだけ喚く元気があれば十分や、ウチはピンセットで絆創膏をつまみあげ、ぽいっとハチルに投げてやる
慌ててそれを掴んだハチルが、相変わらず雑だな、と言いたそうな顔をした
クインのハチル依存はれっきとした病気だ。
それならば、どんなに酷い仕打ちをされてものこのことここへ帰ってくるこの男もまた、頭の病気なのだと判断するのが妥当である
二人の関係にはもはや誰も口を出さない、首を突っ込まない、それがこの場所で生き残るための知識で、暗黙のルールだ
クインという女王蜂の、利己的で、自己中心的な、ルール。

「アンタさァ、アイツのこと、ほんまに愛しとるん」

負傷した左手で何とか絆創膏を貼りつけようと苦戦していたハチルに、そう呟いた
彼は一瞬ちらりとウチの方を見て、それから少し目を伏せてから短く言い放つ、

「あぁ」

ウチやったら絶対に無理やけどなぁ。添えた言葉は本心で、それでもハチルの答えは何となく予想できていたのだけれど。
治しても治しても治らないその傷を抱えてもなお、あの女を愛す覚悟がこの男にはあるのだということは、ずいぶん前から気づいていたのだけれど。

「やっぱアンタら病気やわ」

それも、医者のウチにはきっと治せない、重い病気
ウチがクインになったところで、あんたの病気はやっぱり治せないんやろうな、口にしない言葉は彼には伝わることはなくて、
そしてウチにも、彼の病気の原因なんか一生分かることはないままで、

溜息をついて、ウチは医療道具の入った箱の蓋をぱたんと閉じた
もう一枚、余計に取り出しておいた絆創膏をはがして、今度はそれをハチルの首筋にそっと張ってやる
思った通り、驚いた顔を見せた彼にはいつものしかめっ面をして

「キスマークついとるで、ドアホ」

ウチは彼の首筋に張り付いた絆創膏を、そうっととびきり優しく撫でた




隠したキスマーク

(隠れたキスマーク)



ヒチハちゃんはクイン様が大嫌い ハチルのことはただのかわいそうな人だと思っていますヘタレは恋愛対象やないねん





2011/05/09(Mon)
ADMIN