はすみ クソ野郎が死んだせいで、あたしはヤツの遺品を整理しなきゃならなかった。
キッチンのシンクの下からは大量のゴミ袋。
キャビネットの引き出しからはピンク色のボタン。
最悪だ。サイアク。
目を閉じて溜め息を吐くと、頭の中でろくでなしの声が響く、そんなに嫌がらなくったっていいだろ。
「いやだよ」
当たり前じゃないか。なんであたしがあんたの家を片付けなくちゃならないんだよ。
ふと見上げればベッドの上でニヤニヤ笑うそいつの肩越しに、沈んでくオレンジ色の太陽が見えて
気持ちわりいな、とおもう。こいつが死んでから時間が経つのが恐ろしく速いんだ。
あたしをのんびり眺めながら、それでもちっともあたしを手伝ってくれないその男は、
ただただ微笑みながらベッドの上に座っていた。
だからあたしもあまり気にしないようにしながら、ただ黙々と作業を続ける。
そのうち彼が消えるのは知っていた。
あたしにしか見えないことも知っていた。
だって彼は死んじゃったのだから、ベッドに座ってニコニコしたりするわけないのだ。
目を上げたら、やっぱり彼はいなかった。
重たい手を下ろしたら、持ってたゴミ袋がだらしない音を立てて落ちた。
「はすみ」
不意に後ろから抱きしめられて、あたしは泣いてしまいそうになる。
須藤の腕が、キッチンにしゃがみ込んだままのあたしの首にそっと巻き付けられた。
すぐそばで優しい声がする。
それだけで、泣きたくなる。
あいつがいなくなった部屋は、いつもより広かった。
思いっきりぐずぐずと泣いてから、あたしはこの部屋をとっとと売ろうと決めた。