何だか苦しそうな声が僕のベットから聞こえていて、
ふしぎに思った僕がそっと覗きこもうとしたら、ベッドの中の生き物は突然がばりと僕の手を掴んで引っ張った
殺意、それに似た、一瞬ひやりとした感覚が背中を伝う
そのまま引き込まれるようにしてベッドの中に落っこちた僕を、彼は驚いた様子で見つめた
「…なにしてるの。何度も言うようだけど、これ、僕のベッドだよ」
僕の顔を見るなりぱたっと腕の力を抜いたハチコが深いため息をつく
ため息つきたいのはこっちだよ、と口を開く間もなく、支えを失った僕の体はそのままハチコの腕の中に転がった
「キャシーかと」
もごもごとハチコは言うと、情けなく笑って見せる
僕が呆れたように、でもそのまま腕の中で大人しくしていると、彼は僕をいつもみたいにぎゅっと抱きしめた
触れた薄いシャツの向こう側で、ハチコの心音が暴れているのが分かる
見上げた顔は微笑みを浮かべてはいるものの、なんだかいつもよりぐったりしているように見えた
「キャシーだったらベッドに引きずりこむの?」
「…悪かったって」
僕の疑問符を皮肉と受け取ったのかハチコは素直に謝った
腕の中は居心地が悪いぐらい熱くなってきて、僕はもぞもぞと頭を布団から出した
ハチコの手のひらがぼくの頭を撫でて、その熱さに僕は顔をしかめる
「風邪ひいてるの?」
「かもね」
ごほごほ、なんてわざとらしくせき込んで見せるハチコに僕はため息をついたけど、
そのまま僕の手のひらをハチコのおでこにあててみてから納得した
こうなると、もう風邪をもらいに来た様なものじゃないか。こんな至近距離に、病人と二人
「ねェ、鯉壱、看病してよ」
「どうしようかな」
首をかしげて見せた僕をハチコが笑う
一緒に寝るぐらいならしてあげてもいいよ、僕がそう呟く頃にはもう彼の瞼は落ち切ってしまっていて、
僕はその言葉が彼に届いていたのかさえ分からなかった
たまには俺にも優しくしてよ
随分前のSNS看病バトンのときの
ハチコは風邪引かなさそうですね