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あいかわらず蜂散はその長身でがばりと鯉壱を抱きしめて
ひたすら意味もなく「こいちこいち」とハートを飛ばしまくっているわけで、
いくら個人の島とはいえども公式の場所でそういう全開のピンクオーラをこれ見よがしに見せつけるのはどうかと思う、
むしろあたしの鯉壱を許可もなく抱きしめるなんて犯罪だ、窃盗罪だ!!((
鯉壱を物のように言うのはなんだか気が引けるけれども、それでも蜂散みたいなサイテー野郎に鯉壱を渡すぐらいならまだ、いい
あたしの存在に気づくなり蜂散にはもったいない程の笑顔を見せてあたしに微笑む鯉壱を
ちくしょうかわいいなぁ!!だなんてこの状況でキュンキュン胸をときめかせてしまうのは
それはまァ惚れた弱みというやつであたしの理性なんてものはぽきんと音を立てて崩れ去ってしまうから不思議だ、
あたしは可愛い鯉壱にぶんぶんと手を振って、(真後ろにいる蜂散にはもちろん視線なんか合わせねェ!!)
がばりと強引に蜂散から鯉壱を抱きすくめるとすさまじく中の良い兄弟宜しく二人揃ってぎゅむっと抱き合った
「鯉壱ー!!!きょうもかわいい!!」
「(ぼきぼきっ)ちょ、くくるし…!!」
それこそ蜂散のピンクオーラに負けないぐらい勢い宜しく飛びついたあたしの背中を
鯉壱が苦しそうな声を上げながらあわててぱしぱしとたたく、
あたしが漸く肩の力を抜いた頃には鯉壱はへたりと体を曲げた
「うおっ鯉壱だいじょうぶ!!?ごめんやりすぎた!」
「へ、へいき…!(よろり)」
「いや言っとくけどそれは大丈夫っていわねェぞ鯉壱…!」
「(ケッ)だまれこのハチ野郎さっさとくたばれ!!」
「(うわああいかわらずこの子口悪すぎだろぉ)」←どんびき
慌てて声をかけるもあたしの手の中であたしを気遣うその鯉壱の優しさに、
こんな状況でも胸が苦しいなんてこ、これは病気に違いないよどうしよう!
ひとり心音をバクバク言わせているあたしの後ろで蜂散が薄く反応を見せるけれどそんなことは気にしない、
だっていま鯉壱は蜂散じゃなくてあたしの腕の中にいるのだ、ざまァ見ろ!!
よろりと起き上がった鯉壱に手を貸して、彼がちょこんと椅子に座るのを見届けてから
漸くあたしはまじまじと蜂散を見上げた、
身長も高いし顔だってそこそこいいし、本当は根が優しいってことも分かっている、けど、こいつの病気は治らない。
じろじろと自分を眺める視線に気づいたのか蜂散が眉をしかめてつぶやく、
「なんだよ」
「いやあべつに!!鯉壱に手ェ出す蜂にどういう殺虫剤なら効くのかなって!(にこ!)」
へらりと答えれば蜂散は至極胡散臭そうなものを見ている目であたしを見下げた、
まぁたぶんどんなに強力な殺虫剤を用意したところでこの男はいつまでもいつまでもしぶとく鯉壱の周りにくっついているんだろうな、
ふっとそんな考えがよぎってしまってあたしはのんびりと鯉壱を見る、
それくらいあの子の引力は強いんだ、何よりも、何に変えてもあの子を守りたいと思わせてしまう力が、あの子にはある。
だから鯉壱は誰よりも弱くて誰よりも強くて、小さくて大きい存在なんだ、
少なくとも魅了されてしまったあたし達にとっては。
「なんとなく、わかるよ」
「何が」
「ハチコが浮気しちゃう気持ち」
笑顔とともにさらりとつぶやいて見せたあたしの言葉に、
声に出さなくても蜂散のそのとぼけた表情から気持ちは分かる、頭の中は「はァ?」の2文字だ。
けれども彼は「俺は浮気なんかしてねェ、」とは言えない、それぐらいあたしだって分かる。
鯉壱を好きだって思う気持ちは、たぶん恋愛感情ではないのだ。
曖昧で不確かで、それでも心の一番奥深くにある、何かあったかい気持ちなのだ。
きっと母性本能的な、家族愛的な、形容しがたいほど平凡で、普遍な何かで、とにかくみんなが持っていそうな愛。
緑露ちゃんに入れてもらったミルクティーを啜りながら微笑む鯉壱を見ていると、
何故か見ている方まで口元が緩んできてしまう、そういう、愛。
「だからって鯉壱をキズモノにしたらお前ぶっ殺すかんな…!それこそクイン様に殺られるより酷い最期を迎えると思えよ…!!」
あたしみたいな可愛い女の子が吐くとは思えない殺伐とした言葉に蜂散はすぐにひぃ!と情けない悲鳴を上げて、
それからあたしは満足そうにほほ笑む、
そうそうこれだ、あたし達の関係は、これでいいんだ