（やっちゃった映画ネタどうどうとネタバレなんですけど許してください）
「ここは、俺の世界だ！」

噛みつくように告げた彼の後ろで、きぃ、と青空にロープが揺れる
でも、と口を開こうとした鯉壱の襟首を、蜂散の手が乱暴に掴んだ

「…お前は、…どっちの味方なんだよ、鯉壱」

乱暴に引き寄せられたその表情は今にも泣き出しそうな顔で、
やっとのことで吐きだした声は聞き取れないほど微かだった
鯉壱は何の抵抗もしないまま、蜂散の目を見据える

「さァね…僕は誰の味方もしないよ、」

塔の螺旋階段を駆け上がる音が止まらない
今にも怒り狂った人々が階段を上り切って、ここへやって来て、暴れる彼を縛り首にするだろう
酷く青い空が、焦るばかりの蜂散の心をかき乱しているのは明らかだった
乱暴に立ち上がって、蜂散はじりじりと近づく彼女たちの声を我慢できないとでもいいたげな顔で頭を振りながら必死に掻き消そうとする

「俺はお前らを愛しただろう！！」

わめく蜂散の声が、青空に吸い込まれていく

「俺は、お前らを愛してたんだ！！！」

一人の女が階段を上り切った
その後ろから、二人目、三人目、たくさんの影が押し寄せる
寂しそうな目の鯉壱を蜂散は乱暴に振り払って、逃げ出そうと腕を伸ばした

「それは違うよハチコ」

人込みの中、押さえつけられる蜂散を背に鯉壱は呟く

「蜂散は自分を愛してたんだ」

自分しか愛せてなかったのさ
鯉壱の言葉に、蜂散の目が見開かれる
首にかかったロープを、最後に絞めたのが誰なのかはもうわからない
見上げる群衆の中、一人笑ったままの鯉壱が、何も言わずに絞首台のレバーを引いた

ハローグッバイ、ダーティーワールド

( きみはもうぼくらをひつようとしていない )