つめたい空気が彼女の頬をちくちくと刺し続けて
愛らしい程に赤くなったそれはまるでビスクドールの頬のようだった。
「シシー、寒くない?」
「平気よ兄さん」
あっさりとそう呟いてから、とってつけるのを忘れたとでも言うように何秒か遅れた笑顔を彼女は転に見せる。
一瞬さみしそうな笑顔を返した転も、そう、と短く息を吐いた。
繋がれた左手は、兄の温かい右手に包まれたまま、
急に立ち止まった兄の顔を見上げれば、彼はにこりと微笑んで両手を広げた。
「おいで、抱っこしてやるよ」
ぽす、と小さな音を立てて、包まれた途端に感じる体温も、
耳を掠める彼の吐息も、
あぁ、これが愛というものなんだろうかと彼女の思考を緩やかに侵食する。
転は軽々と小さな少女を抱き上げてから、またとびきりの笑顔を見せて
「愛してるよ、シシー」
囁きと同時に額に落とされた温かいキスは、
冬風になでられて急激にそのぬくもりを失ってしまったけれど
胸の中に落されたこのぬくもりが覚めてしまわないよう、
少女は彼に返事をする代わりに彼の首筋にぎゅうと腕を巻き付けた。
ぼくの一生分の愛をきみに
何万回のキスと何万回の愛を誓う
「誕生日おめでとうシシー、お前が生まれてきてくれてよかった、」
シシーお誕生日おめでとう!