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リアル捏造
蜂散と里壱
またハチコをいじめているよ
なににも関心を示さなかった少女が彼に興味を持った理由は、単純に、彼のことが好きだったからだ
あのときの彼の顔はひどく弱弱しくて、彼女は一瞬誰か別の人間を相手しているような錯覚を覚えたのだ、
そう、たとえば、弥太郎とか、
「そんなこと、ひとことも、」
蜂散の声が静かに、それでも微かに震えて、鯉壱は曖昧な笑顔を浮かべたままそれを見つめていた
鯉壱は思案する。どの言葉なら彼に分かってもらえるだろう?
慎重に言葉を選ぼうとしたけれど、結局その言葉は見つからない、見つかるはずもない
ハチコと弥太郎の性格は真反対だし、弥太郎はこんな軽い男でもなかった、ハチコと弥太郎は違う。
分かっていても、それでも、時折見せる表情も、優しい声も、綺麗な笑顔も、広い背中も、
時々彼と重なってしまってどうしようもなく愛おしい
包んで欲しい受け止めて欲しい、また僕の前で笑ってくれて、手をつないでくれたら、それで、
重なった影はどんどん大きくなって、いつかハチコを見失ってしまいそうで
気付かないふりをしようと、僕だって頑張ったんだけど、ねぇ、やっぱり無理みたい、
「僕、弥太郎が好き」
彼が静かに呟いた言葉は、蜂散を硬直させた
一瞬開きかけた蜂散の口が、ぎゅっと思い切り結ばれる
わかってる、わかってるんだ、最低、自分自身に吐き気がする。
ねぇだから、ハチコが僕の頭を思い切り殴ってくれたら、この曖昧な夢から覚めるかもしれないんだ
「僕は今でも弥太郎が好き」
鯉壱が吐きだした言葉は本物だった
ただしそれは蜂散が思う様なものではなく、たとえるなら憧れに似た感情だったのだけれど
それでも鯉壱の言葉は蜂散の心を抉るのには十分すぎる刃物だったに違いない、
その証拠に蜂散は曇らせた顔に戸惑いの表情を隠し切れていなかった、
「ハチコ」
「もう、いいよ」
もういい
彼がやっとの思いで絞り出したのはたった一言
それで十分だった
それが、限界だった
「ハチコ、」
鯉壱が見上げた蜂散の顔は、いつ雨が降ってくるかわからない曇り空に似ていた
蜂散はふっと眉を下げて、それから鯉壱の目をまっすぐ見つめる
その表情が、ますます鯉壱を焦燥に駆り立てることを彼は知らない
泣きだしてしまいそうになる、だってその顔は、覚悟を決めた様なその表情はあまりにも死ぬ前の弥太郎に似すぎていて
やめてよ
そんなかおしないで
「俺は、さ」
おかしくなりそうだ
真剣な蜂散の眼差しを眺める鯉壱は唇を噛んで彼の次の言葉を待った
「俺は、俺は八乃木弥太郎がどんなやつなのかなんて、そんなこと知らねェ。それに、鯉壱ちゃんから見れば、俺のほうが新参者かも知れねェ。でも、俺は、そんなことどうだっていいんだ」
蜂散の笑顔が痛い
蜂散の声が痛い
知らないほうがどんなに楽だっただろう
今目の前にいるのは、自分勝手で、騒がしくて、それでも本当は誰よりも優しいスズメバチで
綺麗な笑顔を残したままいなくなってしまった、あの人とは違うってこと
「俺のことは、どう思ってんの」
ごめんハチコ
口にした言葉は声にならない
それでも伝えずにはいられない
弥太郎が最後に残していったきみを、遠くで眺めているだけのつもりだったのに
蜂散はあっという間に里壱の心に入り込んで、その小さな胸をぎゅうぎゅうと追い詰めた
すきなの、
わたしはやっぱり、だいすきなの
あなたも、弥太郎も
声にならない言葉は、瞳から溢れだして少女の頬を濡らして
静かな部屋にすすり泣く音だけが痛く響いた
弥太郎と蜂散が別人なように鯉壱と里壱も別人です わかりにくいけど鯉壱がしゃべってるのは里壱の言葉で里壱の気持ちだよ 鯉壱本人はマスターが何考えてようが蜂散が何に悩んでようがどうでもいいんだ
里壱は大人が大嫌い初めて認めてあげた大人があっという間にいなくなって弥太郎にはものすごい執着してる だから弥太郎が残した蜂散をどうしても弥太郎と勘違いしてしまうんだね
蜂散は弥太郎が死んでからはすみが起動させたプログラムだから弥太郎のことはぜんっぜん知らなくて鯉壱のことが純粋に好き でも鯉壱は別に何とも思ってなくて、里壱が蜂散の中に弥太郎を追いかけて ようはどろどろなんだよ ほんとすばらしいね好き勝手できるって!!(こいつ