ばいばい、と駅前で蜂散に別れを告げて、鯉壱はゆっくりと地面に足をつけた
一瞬拗ねたような顔を見せる蜂散が、楽しんで、なんて皮肉を飛ばしてくるから
はちこもね、そう笑ってから勢いよくドアを閉める
こういうのを「二股かけられてる」っていうんだろうか
鯉壱は去っていく車のブレーキランプを見ながらぼんやりと思う
きっと二股どころじゃないんだろうけど、なんてどうでもいいことが頭をよぎって
でもやっぱりハチコだから仕方ないよなぁ、結局はそれで終わってしまう、それだけの話なのだけれど
ふと見上げた空には早くも白い雪がちらつき始めていて
鯉壱は違う空の下で微笑んでいるであろう彼に、小さく微笑んでからほどけかけたマフラーを巻きなおした
きょろきょろとあたりを見渡せば探している人物は思った通り容易に見つかって
鯉壱ー!!と大衆の面前で恥ずかしげもなく大声で自分の名前を呼ぶ彼女は満面の笑顔を浮かべている
返事の代わりにゆるりと微笑んで手を振ると、リオートは横断歩道の向こう側、赤い光を睨みつけた
今年はにぎやかなクリスマスになりそうだなぁ
視界のはじに黒いヘルメットに抱きかかえられたままのエマージェンシープログラムが入り込んで、
鯉壱はするりと交差点へ抜ける
青になった信号がリオートのスタートダッシュの合図で
ぎゅむって抱きしめてしばらくは離してくれないだろうなぁ、
鯉壱はせっかく巻きなおしたマフラーを微笑んだまま静かに外した