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言われてはっと俺は我に返った
途端に苦しくなって、俺はようやく息をするのを思い出す
肩で息をして、ゆっくり顔を上げれば大きな帽子を抱えた鯉壱が、心配そうな顔でこちらを覗いていた
「大丈夫?」
あァ平気さ
じわりと頬に滲む汗の前でにこりと浮かべた笑顔は強がり以外の何でもなかったのだけれど
鯉壱はきっとそれすらお見通しで、ゆるりといつもの柔らかい笑顔を浮かべてから
俺ががっちり抱えていてくしゃくしゃになったクッションを優しく抜きとった
一瞬口はあけたけれど、大した抵抗もできないまま白と黒のクッションは鯉壱の手に渡る
「Daddyはいつもこれ抱えてる。それから、これ抱えてるときはいつもどこか不安そうなんだ」
ひっくり返したりつついたり、俺のクッションを念入りに調べながら鯉壱が呟いたその言葉に俺は思わす感心した
この子は、本当に何でもよく観察しているんだ。何も見てないようにみえて、何でも見ているんだ
実際のところクッション自体はただの飾りだ。俺は抱えられるものなら何でも抱えるし、抱えないと落ち着かないのだから
「ね、このクッション、何か秘密があるの?」
残念だったね鯉壱、そんなに目を輝かせて聞いたって、
俺の秘密は教えてあげるわけにないかないんだ
「秘密は秘密にしておかないと面白くないだろう?」
鯉壱はちょっぴり不服そうな顔をしたけれど
俺は小さく微笑んだまま、鯉壱からクッションを取り上げた