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2025/01/15(Wed)
ADMIN
ちょうどあれは今頃、肌寒いくらいの秋の日で
思い出すたびに残念ながら吐き気と寒気とそれに相応するぐらいの嫌悪感と罪悪感と怒りがこみ上げて来て
俺はいつも途中で思い出すのを断念しなければならないのだけれど でも俺だってそいつを思い出したいわけじゃあない、ただ、ただそこにしか、俺の手がかりは残っちゃいないんだから思いだすよりほかに仕方がない、
俺は抱えていたクッションを強く抱きしめると一つだけ深呼吸をした

ピンクはあの子たちの好きな色であの子たちによく似合う色で
だから俺もピンク色は大好きだったけれど

あの日のピンクは正直見るに耐えなくて

どくり、と心臓が暴れた
肌が泡立って、全身が燃えるように熱くなる
おちつけ、おちつけ、おちつけおちつけおちつけ
もう、何年も昔、の話、だろう
それでも胸の苦しみは収まらなくて、それどころか心臓が脈を打つたびにひどくなって
何もかも吐き出してしまいたい感情に駆られて俺は思い切りしかめた顔で歯を食いしばった

何のためにここまで生きてきたんだ

強く抱きしめられ続けたクッションが、ぎちぎちと皺を作って悲鳴を上げるのにも気づかないまま
俺は一生懸命ポツンと残された細い細い理性の柱が折れてしまわないように祈った

これはあの子たちの望んでることなのか

痛い
体中が痛かった
あの子たちを助けてやれなかった、それだけが全てで、それだけが残った
罪悪感、そんな生ぬるい言葉じゃあ表現しきれない
俺のせいで、あの子たちは死んだんだから
だからだから俺が蹴りを付けに行くんだ、俺が全てを終わらせるんだ、
結局はそれすらも自分の為だなんてこと、分かり切っているのにそれでもそうしなきゃ気が済まない収まらない
だからだから、

「Daddy」

言われてはっと俺は我に返った
途端に苦しくなって、俺はようやく息をするのを思い出す
肩で息をして、ゆっくり顔を上げれば大きな帽子を抱えた鯉壱が、心配そうな顔でこちらを覗いていた

「大丈夫?」

あァ平気さ
じわりと頬に滲む汗の前でにこりと浮かべた笑顔は強がり以外の何でもなかったのだけれど
鯉壱はきっとそれすらお見通しで、ゆるりといつもの柔らかい笑顔を浮かべてから
俺ががっちり抱えていてくしゃくしゃになったクッションを優しく抜きとった
一瞬口はあけたけれど、大した抵抗もできないまま白と黒のクッションは鯉壱の手に渡る

「Daddyはいつもこれ抱えてる。それから、これ抱えてるときはいつもどこか不安そうなんだ」

ひっくり返したりつついたり、俺のクッションを念入りに調べながら鯉壱が呟いたその言葉に俺は思わす感心した
この子は、本当に何でもよく観察しているんだ。何も見てないようにみえて、何でも見ているんだ
実際のところクッション自体はただの飾りだ。俺は抱えられるものなら何でも抱えるし、抱えないと落ち着かないのだから

「ね、このクッション、何か秘密があるの?」

残念だったね鯉壱、そんなに目を輝かせて聞いたって、
俺の秘密は教えてあげるわけにないかないんだ

「秘密は秘密にしておかないと面白くないだろう?」

鯉壱はちょっぴり不服そうな顔をしたけれど
俺は小さく微笑んだまま、鯉壱からクッションを取り上げた




良い双子の日(11/25)にあげるつもりだったんだけどどうしてこうなった
Daddyの目の前で殺された娘は双子でしかもピンクの似合うとびきりかわいい子たちだったんだよ しかし大の男が悶え苦しんでるの大好きだねわたしは



 




2010/11/28(Sun)
ADMIN