なぁなぁお嬢、キャスケットの嬉しそうな声が言う
返事の代わりにクインは荒い舌打ちを一つ
目の前で、赤くにじむ横断歩道の信号が二人の足を止めていた
「気に入った?指輪!」
「気に入らねェよ、てめェの魂胆なんざ丸見えだァ」
「それなら話が速ェ、結婚しよう」
「誰がてめェ見たいなカスと結婚すんだよバーカ」
鳩尾に思い切りクインの肘鉄を食らって情けない悲鳴を上げるキャスケットをよそに
信号は呆気なく青に変わった
クリスマスに浮かれた人の波が同時にざわざわと動きだす
きらきらと目敏く輝くイルミネーションにごちゃごちゃした人の波は滑稽なほどお似合いだ
少し遅れてから腹を押さえたまま駆け寄ってきたキャスケットに
クインは人込みを掻き分けて、歩く
「お嬢、次はどこ行くんだァ?」
能天気なキャスケットの嬉しそうな声
あァ、クリスマスに浮かれているカス野郎がここにも一人、吐き気がする
ちらりと視線をやった反対車線の車の窓ガラスには子供が一人ハートをかいてみたりしていて
目に見えない気色の悪い真っ白な雰囲気に
クインはイライラと目を細めて首のマフラーを巻きなおした