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いいのか、体調はもう
自分に向けて吐かれた彼女の言葉に、俺は少しうつむき加減に笑って見せた
「はすみ俺が留守の間部屋片してくれたろ?ありがとうな、帰ってきてビビった」
「退院の時は連絡しろっつったろ!あたし迎えに行こうと思ってたのに、」
「ううん、悪いよそんな。俺だって一人前の成人男性だよ?おうちに帰るぐらい楽勝だって」
「あたしはあの部屋の散らかり方からお前を成人男性と認めるわけにはいかない」
「あはは…」
あいかわらずこの人は俺に対して辛辣だ。でも俗に言うこれがツンデレなのだとしたら、まぁそれも可愛いかなと思ってしまう。
はすみは俺がいない間にもう何がどこにあるかもマスターしたらしく、
俺が久しぶりのクッションソファーのふわふわ具合を確かめている間にずかずかとキッチンに向かうと、帰ってくる頃にはショートケーキと一緒に紅茶まで淹れてきて、丁寧に小さなテーブルに置いた
小さな皿に、乗せられた金色のフォークがカチャリと音を立てる
「ありがとう…うまそーだね、どしたのこれ」
「退院祝いだからな、さっき買ってきたんだよ。お前何が好きなのかわかんねェからとりあえずショートケーキにしたけどクリームとか、平気だよな?」
「うん、俺は食物アレルギーとかはないから」
俺のことを心配してくれてるのは嬉しいけど、明らかにはすみの方がピースがでかい。
でもそれを口に出したらなんだよ、と睨まれるのは判っていたから
とりあえず俺は頂きます、とだけ言ってケーキに口をつけた。
自分は早々とフォークを握っていたはすみは俺が一口食べるなりうまいだろ?と嬉しそうな笑顔を見せるから、
あぁこれがツンデレのデレの部分だな、俺は心の中でそう呟いて一つうなずく、確かに可愛い。
「あたしのとっておきの店なんだ。弥太郎にも食わせてやろうと思ってたのに、なんだかんだであげられなかったろ、食事制限とかあってさ」
「あぁあれね…きつかったなぁ…」
「お前すごい痩せちゃって、あたしにこっそりチョコ持ってこさせようとして」
「必死だったんだって俺」
もぐもぐやりながらはすみの言葉に相槌を打つ。
そういえば、はすみとじっくりしゃべるのも久しぶりだなぁ、とふと思った
彼女はしょっちゅう俺を見舞ってくれはしたが、いつもあまり長くはいてくれず、すぐに帰ってしまうのだった。
仕事が今は忙しいんだろう、そう思うと仕事ほっぽり出してぶっ倒れた俺的にはちょっと申し訳なくもある
「ねェ、はすみ、俺がいない間になんか変わった?」
そう何気なく聞いてみたら、彼女はぎょっとした様子で口に運びかけたフォークの手をとめた。
かと思うとはすみは急に顔を真っ赤にして慌ててがしゃんと派手な音を立てながらフォークを置く。
なんもねェよ、!と口ごもる明らかにおかしい態度のはすみをポカンと口を開けたまま見つめていたら、こっち見んなッ!と怒られた。
理不尽だ、とおもう。
「いや、あの、仕事のことなんだけど…。俺がいない間に、なんか仕事に支障あったかなって…俺みんなに迷惑かけてるだろ?」
「…!!…………べつに、お前が思うほど深刻でもねェよ…病人なんだから気にすんな」
仕事の話かよ、というはすみの荒い舌打ちが聞こえたような気がしなくもないけど、
仕事以外のなんだってんだろう、俺は肩をすくめて紅茶に一口口をつけた。
途端に、うっと咽た。はすみ、砂糖どんだけ入れたんだ?甘すぎる。
抗議しようと思ってちらりと彼女に視線を戻したのに、その先のはすみがあまりにもきれいに笑っていたから俺は一気にその気が失せてしまった。
黙ってれば可愛いのになぁ、俺的にはたまにデレるくらいよりたまにツンの方がいいと思うんだが、それはツンデレの美学には反するのだろうか。
まぁそれじゃあデレツンだもんな。なんて、俺はぽかんとしたままそんなことを思う。
俺がいない間に、かわったのはこの人なのかも、ふとさっきのはすみが赤くなった理由が判って、俺は思わず苦笑した。
「なに」
「いやぁはすみ、可愛いなぁって」
「はっ!!?なに、セクハラ!!?」
「仮にも褒めてんだから全力で引くなよ」
眼を細くして俺を観察するはすみの視線、なんだかそれすらもくすぐったくておもしろくてたのしくて
俺はケーキと紅茶でいっぱいになった胃袋のままゴロンとその場で後ろに倒れ込んだ
何してんだよ行儀悪いな、そういうはすみの声が降ってきたけど俺は気にしない
やっぱり俺、うちに帰ってきてよかったよ
俺は、はすみと一緒にいられることが一番大事なんだ