忍者ブログ
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。



2025/01/15(Wed)
ADMIN
れんあいかんじょうとか、? それは普段通りのぽあっとした顔で鯉壱が口にするような言葉には思えなくて、
俺は見るともなしに見ていた天井の照明から視線を引っぺがしてソファ越しに鯉壱を振り返る。
声の主はてくてくとソファの後ろを通過して、
ぽんと軽やかにテーブルに載せられたのはチョコチップの入った焼き立てスコーン。
たべる?そっと呟かれた普段通りの鯉壱らしい言葉より
さっきの発言の意図の方が気になってしまう俺は
眉根にしわを寄せて彼に聞き返す、いまなんていった?

「はちこのしゅせいぶん」
「(は?)…しゅせいぶん?」
「緑露ちゃんが言ってたんだよ、ケーキの主成分は小麦粉、ミルクティーの主成分は紅茶」

スコーンを片手にもぐもぐやりながらあっけらかんとそう言ってのける目の前の小さな青年は、
いつものようにゆるゆるとほほ笑んで俺の疑問符に平然と答えを返すから、
俺は一瞬固まりつつも結局は鯉壱の堂々とした回答に納得せざるを得なかった。

鯉壱は相変わらず変なことばっか考えてんだなァ、
そう思ったことをぽんと口に出してしまえば
鯉壱は納得いかなさそうにどうして?と首をかしげるのが分かり切っている。
だから俺はただだまって運ばれてきたスコーンに手を伸ばした。

「じゃあ鯉壱の主成分はミルクティーだな」

俺が呟いたその途端、鯉壱はぱちくりとその紫とピンクのその瞳を瞬かせて静止する、
相変わらず口だけはもぐもぐ動き続けているからこの表現は正確ではねェんだろうけれど。
それでも、独り言のように呟いたそれが
まさか鯉壱を固めてしまうほどの威力を持っているとは俺自身も思っていなくて、
鯉壱?、と手を伸ばしかけて、やめた

「だとしたら、はちこもぼくと一緒だね」

ぱちり、今度は俺がめを瞬かせる番。
ひどく優しくそう微笑む鯉壱の言ってることが理解できねェのは、俺だけじゃない俺だけじゃないはずだ、
この子のことはきっと誰も判らない、誰にもわからせようとしないのだ、この子は

「ミルクティーでできてる僕と恋愛感情でできてるはちこの、共通点って何だと思う?」

意味深な言葉の解説もしねェまま、鯉壱は俺にゆるりと微笑みかける。
そうすると俺の頭はなんだかぼんやりと鯉壱に浸食されてしまって
よく分からない彼の言葉の真意も彼の本当の気持ちも彼の頭の中も
もうどうだっていいのかもしれないとさえ思えるのはきっと

「……めちゃくちゃ甘いこと」

ぼんやりと唇さえ動かさずにそう告げた俺に鯉壱はいつの間にか空になった口で笑って
そして、白い指先を俺の前で軽く振って見せた。

「残念、ぼくの紅茶は甘くないんだよ」



 

かくしあじにたりなかったもの





鯉壱はただのあまいだけのおとこじゃねーぜきらん! 疾走シリーズリベンジ



2010/08/20(Fri)
ADMIN