モノトーンのなかに
( 擬リヴ絡み小説09 / 緑露ちゃんとほのぼの / 神田様宅リグレットちゃん )
※神田様のみお持ち帰り可能です。 その日はやけに寒い日で
手袋を片方なくしたと大騒ぎする鯉壱の代わりに手袋を買いに行ってあげようと思い立って
大人しくお留守番していてね、なんて鯉壱が大暴れするわけでもないのにそう呟いて
ばいばいと手を振って島を出た
一歩外へ出てみると、なるほど寒いわけで見わたすかぎりの緑を雪が真っ白く染め上げてしまっていた。
「鯉壱サマは連れてこなくてよかったわ」
きっと寒くて酷い思いをすることになっていただろう、彼には手袋が片方しかないのだから。
ぽつりと誰に言うでもなく呟いて、緑露はマフラーを巻きなおした。
***
「今晩はシチューにしますかね、それともカレーがいいかしら…。でもやっぱり具材が見えないように、リゾットにするのがいいかもしれないわ、」
餌屋の前の白く固まった道を高いヒールでかつかつと歩きながら、緑露はそう言った。
つめたい風が、彼女を急かすようにマフラーをゆらゆらと揺らす。
島を出た理由は手袋だったのだけれど、緑露は晩ご飯のメニューを考えているうちに餌屋の前にやってきてしまっていた。
餌屋の看板を見て、彼女はふっとため息をつく。
「…案内パークの構造がいけないんですわ」
一つの場所からあちこちに飛べるような仕組みになっているから、こういうことになる。
でもまぁ晩ご飯のメニューも決まったことだし、と緑露は思った。
材料を買ってから手袋を買いに行けばいい。
そうなればどれを買おうかしら?なんて値踏みしている彼女の視界に、雪と同じ、真っ白な姿が映った。
「…貴女もそう思うのね」
雪の中、餌屋の看板に寄りかかるようにして立っていたリグレットは、上目遣いに緑露を見上げた。
白い雪の中黒いドレスを着た少女、何故気付かなかったのだろう、自分でも不思議だと緑露は思う。
緑露は少し驚いて、屈みこんでから彼女に微笑んだ。
地面に積もった冷気が、緑露をふっと撫でる。
「さむくないの?そんな格好で」
「初対面でいきなり子供扱い?いくら自分が大きいからって、やめてよね、」
きょとん、と緑露が固まった。
驚いたリグレットは一瞬困ったように、何、よ、と口ごもる。
「そう思ったから言っただけ。貴方もそう思うんだって」
「私が?」
「…案内パークよ」
目をぱちくりと開ける緑露に彼女はかみつくように言い放った。
緑露はちょっと考え込んでから、手袋をつけた右手を少女にすっと差し出して、人差指を立て、
「迷子さん、!」
緑露の大きな手に驚いたのか、ぴょんととびのいたリグレットが赤面する。
大きく眼を見開いて口をぱくぱくと動かすものの、そこから彼女の声は出てこない。
「図星?」
「わ、私は迷子なんかじゃ、!」
嬉々としてにっこり微笑む緑露、
リグレットは周りをきょろきょろ見回して見る見るうちに眉を吊り上げて顔を赤くしたまま怒鳴った。
それでも大きな大きな女はおかましなしとでもいうように、指さしたその手をそのまま返して彼女に差し出してみせる。
「なに、」
「私めは緑露と申しますの。みどりのつゆと書いて緑露ですわ。貴女は?小さい迷子さん?」
にっこりとほほ笑み続ける目の前の女に、リグレットは乱暴に舌打ちを。
貴女に名乗る名前なんて、そう言いかけた彼女の言葉をさえぎるように
素直じゃないのね、緑露は笑ってそう言った。
「見ず知らずの人について行くほど私はバカじゃないのよ、」
「私が貴女のおうちまで連れて行って差し上げますわ、それなら見ず知らずの人について行く理由が出来ますでしょう?」
「…貴女が?」
じろりと見上げた女はその完璧な笑顔を崩さないどころか道案内までするといいだした。
お人よし、と彼女はおもう。
「…リグレット。リグレット・アリア=ライラックよ」
「隠しておくにはもったいないぐらい素敵な名前じゃない、迷子さん」
「だから迷子じゃ、」
「じゃあ行こう、おうちはどこなの?」
「話聞きなさいよね」
ケロリとした顔で微笑む緑露に、リグレットはついに折れた。
人の話を聞かないあたりは迷惑だし、ただのおせっかいなやつかもしれない。
でも、親切で、ただの無害なやつかもしれない。
リグレットにはその判断がつかず、なにしろもうすでに…認めたくはないが、彼女の言うとおり迷子なのだ。
いま自分がすがるべき者がこの巨大緑ポフでも、そうでなくても、
いま自分がすがれるのは、このひとしかいない。
差し出された手に躊躇しながらも自らの手を重ねると、緑露は簡単な感想を口に、
微笑みもそのままにすくっと立ってその手を引きだす。
あきらめを半分抱えたまま、リグレットはばたばたと彼女に引きずられるままについていき、
そしてふっと前を見上げて初めて、
周囲の目線が、目の前の大きな緑ポフと、自分に注がれていることに気付いたのだった。
「ちょっと、そういえばどうして手なんか握るのよ、!」
「また迷子になってしまったら困るでしょう、貴女が」
「だからって、!」
「ほらほら溜息なんてつかないの、幸せが逃げてしまいますわ!」
それに手をつないでいた方が、貴女の手も早く温まるでしょう?
にっこりとほほ笑む緑露に、リグレットはまたしても顔を赤くして目を大きく見開いた。
モノトーンのなかに
( 貴女ってどうしてそうやって人を子供扱いするの!?)
( あら、だってリグレットさん可愛いんですもの )
神田様宅リグレットちゃんをお借りしました!