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2026/06/22(Mon)
ADMIN
こころの覗きかた
( 擬リヴ絡み小説08 / 蜂散とわいわい第2弾 / ・←さま宅ユーベルさん )
※・←さまのみお持ち帰り可能です。
まぁ、あれだ。
もともとどうしてこんなことになったのかという根源を掘り下げていけば、
最終的には我が家の巨大緑ポフのご親切なおせっかいが諸悪の根源だということが浮き彫りになるわけだ。

俺は小さく唸って腕を組み直すと、もう一度現状を整理するべく頭をフル回転させた。

何を隠そうあの緑ポフ、いや、緑露は、買い物にお出かけしたついでに小さな厄介事を連れてきたのだ。
いやいやあの女の大きさで小さく見えてしまうがこの厄介事は小さいどころか大問題だ、
なぜなら今俺は、その厄介事のせいで死にかけているのだから。

目を開くとそこにはボウガン片手にこちらをじっと見ているユーベルの姿。
瞬き一つせず、奴は俺ではなく俺の 『 翅 』 を穴があくほど見つめている。

あァ、おれこのままはねむしられてしぬんだろうか。

いつユーベルがじゃきん!とボウガンを俺に向けるか考えただけで、そのまま気絶してしまいたい気分だった。



***


「おいおいおい待てそいつはなんだ!?なんで手に凶器持ってんの!?」

答えろ緑露ちゃん!そう悲鳴に似た叫び声をあげて俺はささっとソファの後ろに逃げ込んだ。
緑露は俺の素早い動きに目をぱちりと瞬かせ、きょとんとした表情で連れてきた狂気児童の顔を見る。

「ユーベルちゃんですわ」

にっこりと答える緑露、紹介された方のその子供は律儀にもぺこりと頭を下げた。

「あ、ああどどうも…じゃなくて!!名前じゃなくてどういった素性の奴か聞いてるの!」
「お買い物に出かけたら、いつの間にか後ろをついてきてらっしゃったんですの。お名前を聞いたら、ユーベルって仰るから」
「おっしゃるから!?つれてきちゃった!!?うわぁ酷いや緑露ちゃん!!」
「いやあねハチコったらこんなこどもにやきもち?おとなげない☆」
「その口調ムカつくな!?お前いつになったら日本語の正しい使い方覚えんだよ!!」
「あら、どうしたんですのユーベルちゃん?喋る蜂が珍しいのかしら?」
「それだけでかいポフも珍しいけどなっっ!!」

じっと俺を見つめるそのユーベルの視線に気づいたのか緑露は俺の突っ込みを素晴らしいほど華麗にスルーして、しゃがんでユーベルに話しかける。
お前がしゃがんだところで大抵の子供と視線は合わないけどな!心の中でそう叫びつつ、
いまだこちらをガン見中のユーベルを目を細くして見守った。

「…虫……」
「やっぱりハチコが珍しいんですわw」
「笑うな!!何故隣の巨大ポフじゃなくて俺が笑い物にされるのか理解できない!!」
「蜂さんですわ、ユベールちゃん。ほら、触角が2本、見えますでしょう?背中には綺麗な翅もあるの」
「………はね…」

ユーベルは消えるように呟くと、左手に持っていたボウガンを右手に持ち替えた。
ひぃっ!と叫んで俺はあわててソファーの後ろに縮こまる。が、ユーベルはそれを撃ってはこなかった。
そろそろと様子を伺うと、ユーベルは恐ろしいほど適応能力の高い子供らしく、
見知らぬ巨大な女について行く度胸を持ち合わせているうえに、見ず知らずの家に上がり込んでその場でのんびりボウガンを磨きだしていた。
ある意味その姿には力強ささえ感じさせられる。
フキフキとボウガンを磨いて行くユーベルを注意深く見守りながら、俺はそろーっとソファの後ろから這い出して、キッチンで鼻歌を歌っている緑露に駆け寄る。
スカートのすそを引っ張りながらひそひそ声で話しかけると、緑露はしまおうとしていた野菜やらお花やらを置いて不思議そうな顔でこちらを見る。

「なぁおい結局なんであの子ボウガン持ってんの?」
「それは…存じ上げないですわ。普通に考えれば護身用とか…」

いやいや護身どころか殺害だよ正当防衛だからといって最初から殺す気満々じゃまずいでしょ、
そう緑露に告げようとした途端、彼女は突然何かを思い出したかのようにばん!とシンクを叩いたから、
それによりかかっていた俺はうわっと情けない声をあげて数センチ飛び上った。

「わたくしめ、卵買ってくるのお忘れになったのね!ハチコ、わたくしめはこれから卵をご購入してきますわ、ユーベルちゃんの面倒を見ていてくださいますか?」
「え゛っ、お、俺にあの狂気児童を見張っていろと!?」
「やだわ、狂気児童なんかじゃなくってよ。ユーベルちゃんは、ボウガンと虫の羽を集めるのが好きな、ただのお子さんだもの」
「ちょっとまて今ものすごく重大な発言が聞こえた」
「それじゃ行ってきますわ!卵がないと今日のお料理できませんもの」
「ちょ!ちょっと待って!!緑露ちゃんお願い俺死亡フラグ立ってるのねェ気付かないの!?緑露ちゃァァアァアアァん!!!」

俺の必死の静止、いや絶叫も届かず、緑露はいつものように必殺スマイルだけを残して俺の鼻先でバタンとドアを閉めた。
あとに残されたのは、
ボウガンを拭き続ける狂気児童と、
殺されるかもしれないというとてつもない恐怖のみだった。



***



「な、なァユーベル、まずは、ほらその、俺たちあったばっかりだろ?自己紹介とかしようか、仲よくなるために、なっ!」

激しく動揺の入った俺の言葉にユーベルは無言で俺を見上げる。
あぁぁ今この瞬間もユーベルは俺の翅を見ているのだろうか!
もうダメこれ以上同じ空間にいたら心臓の動悸がどんどん激しくなってしまいには爆発してしまいそうだ!!
くらくらとめまいを覚えながら必死ににっこりと作り笑いを浮かべる俺をユーベルは何の表情も浮かべずただじっと見ている。

「……君の名前…知らない…」

言われてはっと気がついた。
そうだ、俺名乗ってねェぞ!自己紹介以前の問題じゃねェか!!!

「お、俺は蜂散ってんだ!えーっと緑露はハチコって呼ぶけどな、俺はあの呼び方好きじゃなくて、」
「ふーん……はち…か…」
「(ちょ、こえぇええぇえ!!)ユーベルはなんか、あれか!その、ボウガン好きなのか!?」

言ってから、しまったと思った。
ユーベルがまたゆっくりと俺の顔を見上げる。

「好きだよ…。ボウガンは…びゅんって飛んで、…終わりだよ…(ふきふき)」
「(俺の命が?!)…そ、そうか、面白い趣味持ってんな…」
「あとは…虫の羽…集めるのが好き…(ふきふき)」

そういってユーベルはまたちらりと俺の翅に目をやる。
あぁあ確実に狙われておりますわたくしの翅!!
早く帰ってきて緑露さん!心の底からただひたすらそれを願うしかなかった。
しかしこの沈黙には心臓が耐えられそうにない。
俺は何か話題はないものかときっかけを探す。
は、話してれば好意を持ってもらえるかもしれない、し!!

「な、なぁユーベル…その、それ、拭いてるの楽しいか、?」
「…………(こくん)(ふきふき)」
「そ、そうか…」

そりゃあそうだよなぁじゃなきゃそんなもんずっと拭いてねェよな!
もう自分でも何が言いたいんだかわけが判らなくなってきた。
ユーベルはただ黙々とボウガンを拭き続ける、そう、表情一つ変えずに。
どうしたもんかと頭を抱えていると、意外にも今度はユーベルの方がぼそりと呟いた。

「蜂散…なんか、趣味無いの…」
「へっ?…あ、えーっと、しゅ、しゅみ?えっと、俺はさ、いろんなリヴリーの島を放浪するのが趣味かな!なんて…」
「…ほうろう?…蜂散、家無いの、?」
「(ぎくっ!)…お、おれはさ、旅好きなんだよ、なんていうか新しい出会いを求めてだな、」
「ふーん…蜂散ってホームレスなんだ」
「ホームレス言うな!!!」

あまりの言われように俺はついユーベルにがっとつっこんだ。
あ、やっちまった、と思った瞬間、ユーベルはくすくすと笑いだす。

「ユーベル、?」
「蜂散うるさい…」
「え、すいません!!」

あわてて謝罪する俺にユーベルは静かに呟いた。

「でも、…嫌いじゃないよ……」

ぽかんとする俺に、ユーベルは、羽…あるしね…と付け加える。
びくりと身を震わせる俺だったが、ユーベルは冗談だよ、と笑った。
な、なんだかよく分からないが、とりあえず、スズメバチ蜂散、死は免れたようです神様ありがとう。




***



「ただいまーですわ」

ドアがガチャリと開く音がして、緑露の声が聞こえる。
ユーベルはというと、いまだボウガンをふきふき中だ。
一時はどうなる事かと思ったが、とりあえず最悪の事態は避けられた。
緑露は俺の姿を見るなり、少し驚いたような表情をした。

「あら、ハチコ生きてたんですか?」
「え、何そのちょっと死んでほしかった的な発言」
「五体満足ですか?翅までちゃんとついてるんですか?」
「あァ、あったりめェだバカヤロー」
「ユーベルちゃん偉かったわね、よく我慢できました」
「注射我慢したときみたいな言い方で褒めるんじゃねェ!!なんか俺に恨みでもあるんですか緑露さん!!」

冗談ですわ、と微笑んだ緑露だったが、いやあ俺には冗談に聞こえなかったよ。
そう心の中で叫んで、緑露に大人しく撫でられているユーベルを見る。
結局ユーベルが何者なのかという疑問は解決できなかったが、でもまぁすこしは打ち解けられたかな…。
そう思ったら自然に笑みがこぼれてきて、自分でも少し驚いた。

さァ頑張ったユーベルちゃんのために、おやつのホットケーキを焼きますわ!
緑露がそう言ってキッチンに向かうと、ユーベルは緑露を見上げてそのあとをついて行く。
なんだかんだいってまだ問題は解決してねェな、ユーベルを元の家に帰さねェと。
でもまぁ、ユーベルが家に帰るまでは、俺もこいつにつきあってやってもいいかな、とぼんやり思った。







こころの覗きかた



( ユーベルちゃん、ホットケーキにはジャムをお付けいたしますか?それともハチコかしら?)( やめろその比喩表現!ちゃんと蜂蜜って言え!!)
( …蜂散で…… )( だからのるな!!!)






・←さま宅ユーベルさんをお借りしました!




2009/11/15(Sun)
ADMIN