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2026/06/27(Sat)
ADMIN
キミの心に溶けて
( 擬リヴ絡み小説06 / 鯉壱と幼馴染 / 珂神菊様宅悠乃ちゃん )
※珂神菊様のみお持ち帰り可能です。 よーく考えてみたら、これはとんでもないことなんじゃないだろうか。

悠乃はかじりついていた本から眼を放して、ふるふると頭を振った。
もう一度小さな黒い活字をにらみつけてみたが、今しがた読んだ文章は行儀よくきっちりそこに並んでいた。
悠乃ははじめから、噛み砕くようにその文をゆっくりなぞる。

『貴方の周りに、運動不足な方はいませんか?』
『それは危険な病気につながるかもしれないのです』

ぽん、と彼女の頭に浮かんできたのは幼馴染のマダラカガ、鯉壱だ。
よく一緒に遊んだりおしゃべりしたりで仲はとても良いのだが、その分余計不安な気持ちが煽られる。
あの人は運動不足というよりか、運動できない体質なのだから仕方ないとは思いつつ、
確かに彼はすこし、この前本で読んだ、『社会不適応者』に近いところがあると思う。
あのマダラカガ、餌も食べないし運動もしないし、そのせいか悠乃より年上なのに彼女より身長が低いのだ。
今思えば彼は不健康体そのものなわけで、いくらただのご近所さんとはいえ、この文章を見た瞬間思わず少しどきりとしてしまった。


「…鯉壱さん…大丈夫……なわけないやんな…」


悠乃はぱたん、と本を閉じると小さくため息をつく。
しかしすぐに彼女の気持ちは切り替わった。

鯉壱さんがぶっ倒れてしまわんように、ウチが鯉壱さんの健康を気遣ってあげんとな!


いよーし、!
とつぶやいて、彼女は立ち上がり、速足でキッチンへと向かった。




***



「健康にはハーブティーがええって聞いたから、」


悠乃は得意ありげににっこり笑って鯉壱に言った。
彼女がキッチンで鯉壱の為に淹れてきたのは、ハーブティー。
綺麗な透明のカップに入れられて、とん、とそれは鯉壱の前に出された。

日の光をうけて黄金色に輝くその液体は、
透明なガラスのカップの向こうに落とす影さえ綺麗に見せていて、
立ち上る澄んだ香りと湯気さえ煌めいているように見えてしまって、
淹れた本人の悠乃でさえ思わずわぁとつぶやきそうだった。

きっと鯉壱さんの為に入れたからやな、と悠乃は思う。
誰かほかの人の為に一生懸命やって、失敗するはずがない。
にっこり笑って鯉壱を見やると、彼も悠乃の淹れた紅茶をまじまじと見つめてからすごい、と小さくつぶやいた。


「すっごく美味しそうだね」
「きっと鯉壱さんの為に入れたからやなー、気合入れて作ったんやー」
「悠乃ちゃんなんだか今日やけににこにこしてない?」
「そう?気のせいや気のせい!そないなことより早う飲まんとー」


首をかしげる鯉壱に、悠乃はあわててそれをかわした。
ただなんとなく自分の淹れた紅茶をほめられるのが嬉しくて、
自分でも気付かないうちに笑みが漏れていたなんて鯉壱にはとても言えない。
いつも自分の手料理の酷さを自覚しているのだからそれはなおさらで、
でも今回は自信があるのだ、だって一生懸命、鯉壱の為に作ったんだもの。

鯉壱が、じゃあ頂きます、と笑ってカップを手にとった。


「あったかいね」
「そんなのあたりまえやんかー、だって紅茶やしー」
「うん、きっと、悠乃ちゃんのあったかい気持ちがたくさん入ってるからだね」
「……そ、そんなふうに言われると、なんか照れるなー…」


二人はどちらともなく笑って、鯉壱はカップに口をつける。
でもなんだか何処か不安で、悠乃はそれをとめてしまった。


「ちょ、鯉壱さん、!」
「え、なあに悠乃ちゃん」
「………鯉壱さんはさ、ウチが料理できないの知ってるやんな…?」
「…僕だって運動できないよ?誰だって苦手なものくらい、」
「そないなことゆうとるんと違くてな、」


悠乃はじっと鯉壱を見つめた。
鯉壱は首をかしげて、どうしたの?と笑って聞く。

鯉壱さんは怖くないんやろうか。
悠乃はふっと思う。
ウチが料理下手だと知ってて、それを食べるのが鯉壱さんは怖くないんやろうか?
でも、その質問を鯉壱にぶつけるのは少し気が引けて、悠乃は少しうつむいた。

怖いのはウチやな。
ウチの淹れた紅茶を飲んで、逆に鯉壱さんを酷い目にあわせてしまわへんかなって、
それを心のどっかで怖がってるんや。


「僕の為に淹れてくれたんでしょ?」


鯉壱が笑って、そっと呟いた。
悠乃は鯉壱を見上げて、頷く。


「僕の為に悠乃ちゃんが淹れてくれた紅茶を、どうして僕が飲みたがらないと思うの?」


鯉壱がにっこり笑うのを見て、悠乃は重たいものを下ろしたような感覚になった。
鯉壱さんならそうゆうと思っとったはずなのにな。
一つ小さなため息をついて、悠乃は鯉壱に微笑んだ。


「ありがとうな、鯉壱さん」
「こちらこそ、悠乃ちゃん」







キミの心に溶けて

( さぁ早く飲んでー!健康面でハーブティーにしたけど、体力付くようにニンニクも入れたったんや!絶対効くで!!)
( に、にんにく!?えー全然分かんなかった…!)
( ハーブの消臭効果とニンニクの臭み消しで相殺したんやと思うわー生姜湯もあるくらいやしニンニク湯あっても平気やろー♪ )
(( 悠乃ちゃんやっぱりすごいや…!))








珂神菊様宅悠乃ちゃんをお借りしました!




2009/11/01(Sun)
ADMIN