まるで夜の空の様な
( 擬リヴ絡み小説02 / ハチコとシリアス / 白珠さま宅ルナちゃん )
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その夜は、いつもと変わらない夜だった。
まとわりつくような黒と、素晴らしいほど整った円形の月。
ほのかにさすその光の中で、ルナ・エレイサベトはため息を一つ吐いた。
ぐるりと見回してみても、暗闇の中でもはっきり見えるその気配。
ざっと10人ほどはいるだろうか。
それが彼女を狙う、組織の刺客達の気配だということは彼女にももう判っていた。
それは彼女にとっては日常であり、いつものことだった。
日常茶飯事、と言い表すのが良いのかも知れない。
彼女は組織に命を狙われることに、もう慣れてしまっていたのだから。
「………いいよ」
手前の男が一歩前へ踏み出したのを見て、ルナは一つ深呼吸をしてからそう呟いた。
彼女の瞳に映るのは、ただただ漆黒のその闇のみだった。
「……はじめよう…」
眉一つ動かさず放ったルナの言葉は夜に吸い込まれていくように消える。
だが今日の月夜が、彼女に非日常を連れてきていたことを、まだルナは知らなかった。
「ぐはあっ!!」
ドサリ、と音がして、男は地面に倒れこんだ。
サリエルで貫かれた体はもう動くことはない。
ルナはそれを表情一つ変えずに静かに見下ろしてから、ぱんぱんと来ていたドレスの土を落とす。
サリエルをしまってあたりを見回すと、気付けばそこは血の海と化していた。
改めてみると敵は10人もいなかったようだ。
多くの男の体が横たわっているが、ルナにしてみればどいつもこいつも大したレベルではない。
この程度の戦闘なら、彼女はお手の物だ。
いま倒れこんだばかりの男にくるりと背を向け、ルナは月に向かって血だまりの中歩き出した。
あるのは闇と月。
どちらとも彼女を否定しようとはしない。
突然背後から男の声がした。
驚いて振り返ると、生き残っていた組織の刺客がルナに向かって思いきり剣を振り下ろさんとしているところだった。
まだ残っている奴がいたのか。
数だけはあるんだからとルナは思い、その攻撃はするりとかわす。
サリエルを出すことすら面倒で、往なした右側から男の鳩尾に力任せに思い切り強烈なキックをお見舞いしてやった。
男はがはっと血を吹いて後方に大きく飛ぶ。
と、思うと時間差で、別の声がげふっ!と言った。
「………………?」
弾き飛ばした相手は一人。
何故か聞こえた悲鳴は二つ。
不思議に思って男が飛んだ方に寄ってみると、
そこでは組織の男とは明らかに様子が違う男がもう一人、意識を飛ばしていた。
***
「……あ、あの…すいません……!」
「あ、いいよぜんぜん、気にしないで、平気だから」
「…でも………」
ぺこりとルナが頭を下げる。
意識を飛ばしていたこの男、どうやらルナの戦闘中に偶然通りかかり、
彼女が弾き飛ばした組織の刺客に当たって地面に衝突し、意識をとばしたというわけらしいのだ。
苦笑を浮かべ、大丈夫大丈夫と彼は繰り返す。
「キミのせいじゃねェから、俺の不注意もあったし」
注意していたら回避できたとはルナには思えなかったが、彼女はそれを言わなかった。
ただこの男を巻き込んでしまった挙句、怪我までさせてしまっては申し訳なくて平気と言われても放っておけない。
「……貴方…名前…」
「ん、あァ、俺は蜂散ってんだ。スズメバチ。キミは?」
「…私は、…ルナ……」
彼女の名前を聞くなり、蜂散はへぇ、と笑った。
「ルナ、って綺麗な名前だな」
「…え……」
「月っていう意味だろ?今夜みたいな綺麗な名前だ」
ルナは、その言葉に小さく目を見開いた。
夜は闇だと思っていた。闇を美しいと思ったことは、もちろんなかった。
「……蜂散って…変な人…」
「え゛……そうかァ…?…俺はルナの方が変わってると思うけど…」
「…どうして……?」
思わず口を衝いて出たルナの言葉に、蜂散は首をかしげる。
ルナに理由を問われて、蜂散は少し気まずそうに眼をきょろきょろさせた。
「…んー…俺が言うことじゃねェかもしんねェけどさ、だって普通いねェぜ、十数人の男に囲まれて無事生還!なんて娘…。俺はモンスターだけど、ここだけの話戦闘能力めっちゃ低いからさwちょっとかっこいいw」
「…………そう……蜂散は強くなりたいの?…」
「いやァ俺はたぶん今の戦闘能力が限界wそれでも好きなことできるし、守りたいもんは守るし、結構不自由しねェよ」
笑いながらそう言う蜂散、ルナはただなんとなく、この男なら信用できるかもしれないとそう思った。
蜂散は、守りたいものをしっかり守れているのだ。
さっきは彼を変な人呼ばわりしてしまったけれど、もしかしたら、彼は私に似ているのかもしれない。
「……ねぇ蜂散…私、貴方に…お詫びしたいの…」
「いいってお詫びなんて!俺が勝手にぶつかっただけだし、ホラ、もうあんまり痛くねェし」
「もしも蜂散が危ないと思ったら…、私の名前を…呼んでほしいの……お詫びに…私、…いつでも駆けつけるから…」
ルナの真剣な顔を見て、蜂散は少し驚いた様な表情を浮かべた。
でもすぐにへらりと笑って照れた様に言う。
「年下の女の子に守ってもらうのも悪くないかなw」
にっと笑って、蜂散は小指をさし出した。
月明かりの下、ルナは驚いてそれを見つめる。
「ホラ、約束な」
「………うん…」
ルナが恐る恐る小指を出すと、蜂散はそれに自分の小指をぎゅっと絡めた。
その指に、それそれの思いを乗せて、月夜の晩に約束は交わされた。
なんだかくすぐったいような、温かいような、そんな気持ちになってルナはくすくすと笑いだす。
つられて蜂散も笑いだした。
月明かりの下で、彼女は久しぶりに笑ったような気がしていた。
まるで夜の空の様な
( 広くて、果てしなくて )
( それでもどこかにつながっている )
白珠さま宅ルナちゃんお借りしました!