俺に喰われてよ。
ハチコがそうっと呟いて、ぺろりと僕の頬をなめた。
正直怖くてしょうがないのだけれど、ハチコであってハチコでないその彼が怖くて怖くて気絶してしまいたい気分だったのだけれど、
それでも僕の瞳から何故か涙は出てこなくてただ小さくカタカタ震えながら、僕は静かに呟いた、
「僕がそれを肯定したら、ハチコは僕を食べるの」
あぁ、なんて笑いながらハチコが呟いて、
背筋が凍りそうになった、
食べられそうで怖いんじゃない、
ハチコがハチコでなくなってしまって、それが理解できなくて、
「そう」
やっとのことでつぶやいたそれも、きっと震えていたに違いない。
それに気付いているのかいないのか、ハチコは突然ぐたりと僕の肩に寄りかかって、耳元で静かに先を続ける。
「いやだって、食べないでって、そう言うと思ったのに。」
そう言われたらいっそ、ふんぎりがついたのに。
ハチコは力なくつぶやいて、そのまますっと目を閉じた。
僕はその重みに壁に寄りかからずにはいられなくなって、ハチコと壁の間で身動きもとれないまま息を詰める。
「そう言って欲しかったの?」
「…リヴリーはみんな、そう言うんだと思ってた」
鯉壱ちゃんは変人だもんね、そういうなりハチコはふっと息をつく。
まァね、なんて返すわけにはいかなくて、僕はおっかなびっくりハチコの背中に手を回して、
緑露ちゃんがそうしてくれるみたいに、ぽんぽんとその背中を撫でた。
そしたらハチコはくすくす笑って、僕の首筋に歯を立てる代わりに小さくキスを落とした。
臆病だといいわけするのはひどく簡単なことだ
( 僕は知ってる、君は弱くなんてない )
ハチコはたまに本気で鯉壱を食べたくなるけど、鯉壱は別に喰われて死ぬならそれでもいいやと思っているので、ハチコ的は食べてしまうのがもったいないと思ってるんだろうなぁと