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2026/06/28(Sun)
ADMIN

280
猫、怪我をする

デュークフリードはしょっちゅう怪我をした。
歩けば何かにぶつかり、走ればつまずき、ひっくり返る。
もともとさえない男一人暮らしの、物の乱雑した狭い狭い部屋だ。
その中を何かあるたび大喜びで走り回るのだから当然といえば当然かもしれないが、
猫はしょっちゅうひっくり返っては膝をすりむき、指を切って、頭をぶつけた。

それでも彼女はうわーんと泣き出すこともせず、けろりとした顔で傷口を舐め、
血の味に顔をしかめて一瞬身ぶるいして見せてからまた、忘れたように俺のそばに駆け寄ってくる。
どんなに小さな傷でも彼女は必ず傷口を舐めて、それから血の味がしたときは懲りずに身震いした。
デュークフリードが急に大人しくなってぞわぞわ毛を逆立てているのを見たら、俺は急いで絆創膏を取りに行く。
ただしこいつは絆創膏が気にいらないようで、せっかく貼ってやってもすぐに剥がしてしまうのだ。
見ているこっちが痛々しいので、絆創膏も包帯も簡単に取れないように俺は気を配っていなければならなかった。

ある日、猫はまた怪我をした。
何もないところでつまずいて、しっぽをじたばたやりながらうずくまっていたのだ。
自分の肘を舐め舐め、彼女は俺の様子をちらちらうかがってはもごもごにゃうにゃう呟いている。

「また転んだのか?」

俺の呆れ半分の問いかけにデュークフリードは首を横に振った。
こいつ、絆創膏貼られたくなくて嘘ついてやがる。
前にもこの猫はあの気持ちの悪い医療道具を貼られるのが嫌で嫌で、絆創膏を隠したことがあるのだ。
だから最近は小さな傷なら消毒だけして絆創膏は貼らないでやっている。

「見てたぞ」

にやりとそう言ってみれば、彼女はびくりとその小さな体を震わせた。
ぴょこんとたった二つの耳が見る見るうちにぺたりとへこむ。

キッチンから出てきた俺が嫌がる彼女の肘をとってみると、猫は諦めたように抵抗をやめた。
そんなに酷く無い傷だ。小さな擦り傷だった。
うにゃーんと顔をしかめているデュークフリードに、俺はまた呆れ交じりの溜息をついて
これは絆創膏必要ねェな、と笑って見せた。
途端にぱっと明るくなる彼女の笑顔

飼い猫の笑顔がみたい、なんて、
俺の猫バカも重症になってきたんじゃねェか。



痛いけど泣かない 泣くって言うことを知らない猫 怪我はほっとけばいいと思ってるから、手当てをしてくれるプッシーフットの優しさなんか気付かない



2009/10/30(Fri)
ADMIN