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お出かけしましょ、そうしましょ
『おでかけ?』
相変わらず上達しない不安定でへたくそな文字が俺の目の前で踊る。
そうだよ、と呟いて、俺はデュークフリードの手を引いた。
「お前も狭いアパートの中じゃ退屈だろ」
デュークフリードは一瞬首を傾げて俺の言葉を聞いていたが、
そのうちぱあっと例の屈託のない笑顔を浮かべてぴょんぴょん跳ねまわりだした。
とびあがった彼女の軽い体重でさえボロアパートは支えきれずにぎしぎしとうめくから、俺は彼女を抑えにかからなければならなかった
腕の中で彼女がくすくすと笑うたびに、長いしっぽが楽しげにゆらゆら揺れる。
『おでかけはひさしぶり』
彼女は今やどこでもどんな体勢でも字を書くことが出来るという特技を身に着けていた。
もちろんそれはそうしないと俺にメッセージを伝えることが出来ないからで、
それでも彼女の字は相変わらず歪に歪んだままだった。
シャーペンはうまく扱えずに芯をぽきぽきおるので彼女に与えられるのはもっぱらボールペンだったが、
それでも彼女は余裕がある時にはシャーペンを扱う訓練も欠かさなかった。
姿こそ人だが、猫が字を書いていると思うと感動的ではある。
「お前拾った時以来か」
呟いてからふと思った。
こいつはどうして俺のアパートの下に、段ボールに入って転がってたんだろう?
怖くて聞けなかったわけでもなく、ただあまりにいろんなことがいっぺんに起きすぎて単純に忘れていた。
こいつが、捨てられてたってこと。
俺の一瞬曇った表情に気付いたのか、デュークフリードは不安げにしっぽを揺らした。
人だったから捨てられたのか、猫だったから捨てられたのか、それともどっちもなのかもしれない。
言葉も通じないこの妙な生き物を、怖がってのことかもしれない。
こいつはいままで、どんな人生を送ってきたのだろう
『おでかけ』
彼女が紙をつきだす。
俺は漸く曖昧な笑みを浮かべて、ボロアパートの薄いドアをゆっくり開いた。
珍しくシリアスな雰囲気 お出かけ先はきっとデュークフリードが見たこともないような場所